文者の庵

-MONJA NO IORI-

君がいた夏

季節の移り変わりを繰り返す。四季に富んだこの国は何度も死と再生を繰り返すかのように時間が過ぎ去っていく。あっという間に僕はおじさんになっていて、少年だった僕の周りにいた人達はもう誰も残っていない。

 

変わってしまうのは悪い事だろうか?きっと、仕方が無い事だと思う。住む世界が変わってしまえば、人と人は別れるしか無いのだ。勿論、無理やり繫ぎ止める事もできるだろう。だけれども、僕はそんなに器用な人間では無い。

 

どんな物事でも捻くれて考える事もできれば前向きに解釈する事も人はできる。アウシュビッツに収監されたフランクルはこういった事を態度価値と述べたけれども、確かにその通りだ、やれやれだぜと思う。

 

何はともあれ、これから今年度も冬が真っ盛りになる。なくした君も仲間だと思っていたけど仲間じゃ無かった彼らも、もう誰一人いない真冬だ。

 

きっと大丈夫、僕はもう一人じゃ無い。積み重ねてきた経験や、自信がある。心を通じ合える仲間がいる。吹雪く冬が終わり、春の桜が散り、暖かい季節が終わった後、夏が来る。君がいる夏はもう二度とやって来ない事はわかっているのだけれども、何故か真冬にその事を寂しく想う。

 

誰かが隣にいる時は鬱陶しく感じたり、誰も周りにいない時は寂しく感じたり、よくわからないワガママな僕は今年も死なずに生きて来れた。